第26回 波の伊八
石川さんは美術業界のサラリーマンとしての5年間に終止符を打ち、ふるさと鴨川へ帰る。ギリシャの山の中にあるキリスト教会壁画を見に行ったりして、3年ほど遊んだ。 鴨川の大山不動に登ったとき、建物正面の彫物が氏の目を引いた。翼のある西洋的表現の龍(ドラゴン)と、東洋の龍が前後一対となり眼下に広がる長狭平野を 初代伊八こと武志伊八郎信由は、1752年現在の鴨川市に生まれた彫物大工で、寺社などの建築彫刻を専門とする職人である。伊八の彫った量感あふれる波と龍などの仕事は、関西の彫物師たちに「関東へ行ったら波は彫るな」(つまり恥をかくぞ)と恐れられたのである。 初代伊八は73年の生涯で50点を越える仕事を、南総から江戸へと残している。数人の弟子を使い作品を仕上げているところから、プロデューサー的な力量も持ち合わせていた。 明治以降、美術の世界も欧米の芸術規範に取り込まれ、日本の根っこみたいなものを失ってしまったと氏は感じている。伊八は日本の根を残しながら、西洋彫刻にも通じる立体的造形性があるのだ。 石川さんは、伊八作品の大きな転換期として、南房総市丸山町石堂寺にある16点の彫刻を見てほしい、見ればわかるという。 南房総は江戸期の伊八が見たであろう風景がそのまま残っているところが多い。森、田、漁村など、原風景の中で五感を使って伊八を感じてほしい、と語った。
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