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南房総 旅の玉手箱

第4回 ヤーンボ


フロアに10万本のヤーンボを並べ立てる
 岩んぼ、房州の方言では、ヤーンボ。漁網の端に付ける10センチ前後の沈子ちんし、穴のあいたオモリである。昔、浜の女衆が山の田の粘土をもらい、大八車にのせて帰る。1個1個粘土をにぎり、竹の棒をさし込み、固まってから棒をぬくと真中に穴があく。浜へ出て流木や乾いた海草などを集めて野焼きにする。
 野焼きのヤーンボは、弥生時代の遺跡からも出土するが、やがて近代漁法の網には鉛のオモリに変わった。和田、白浜、千倉などの海岸を歩くと、時にヤーンボをひろうことがある。手に取ると、かつて浜に生きた女たちの手仕事、働く手のぬくもりが伝わってくる。

「彫刻というのは、乱暴にいえば、物を立ててきた歴史といえますね。ヤーンボを立ててみると上に穴があり、口のようにも、目のようにも見え、造形的にもおもしろい」と話すのは白浜の彫刻家、太田雅典氏(53才)である。氏は、2002年「現代美術から見た縄文世界」で博物館に10万個のヤーンボを並べ立てた。よりそい、うずをまき、かすかになびくヤーンボは、メッカの群衆のようであり、満月に無言の合唱する生物にも見える。

 太田氏が創作活動の場を、東京からふるさと白浜に移したのは8年前、もう一度原点に帰り、自身の彫刻の立て直しを図るためである。ところが、すでに房州の風土の中に、現代美術の彫刻のための彫刻を越える形があった。例えば、波に洗われ劣化した石垣の一部、真中に四角い手彫りのホゾ穴が穿ってある。それは、質量ともに彫刻作品を上回った存在感があるという。それから太田氏は夢中、谷に入っては、核に化石を持つ玉石やヘソ石などを集め、海に出ては馬蹄石などをながめる。毎日がうしろめたいほどに、楽しいという。
 最近の太田雅典氏は、彫刻を越えて光と影、魑魅魍魎ちみもうりょうの世界に関心があるという。



彫刻家・太田雅典氏

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