第3回 今宮様
村に18才の頃の典膳の話が残り伝えられている。ある時旅の武芸者が御子神村に立ち寄ったという。腕自慢の典膳は早速野試合を申し入れた。ところが立ち合ってみると、この武芸者にコテンパンに打ち込まれてしまった。天狗の鼻をへし折られた典膳は腹がおさまらない。翌朝、武芸者が出達のときに、つないであった牛の綱をわざと解き放ち「牛が逃げたぞ」と大声で叫んだ。「どうれ!」と外に飛び出した武芸者のスキを見て典膳がふい打ちに斬り殺ろしたというのである。武芸者の名は「今宮」とだけ伝わっている。 南房総の410号線は、丸山町の丸山川沿いを鴨川市へ向かって走っている。安房中央ダムの下、川谷トンネルの手前左手が御子神である。木製の長い階段の上に「小野次郎右衛門忠明生誕の地」を記念した公園があり、大きな 典膳の生家と伝誦されている家の岩浪仁さん(84才)に「やはり剣の方は達者ですか?」と訊くと「兵隊の時に銃剣をやらされましたが、いやいやでしたよ」とのこと。
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