真鯛
富浦は鯛シャブ発祥の地と言われています。
鯛にも色々ありますが、鯛シャブの素材となるマダイ(真鯛)についてみてみましょう。
分類 | 内海内湾魚介類 スズキ目タイ科 マダイ亜科マダイ属 |
別名 | タイ、ホンダイ、サクラダイ、オオダイ |
学名 | Pagrus major |
分布 | 北海道以南の岩礁、砂礫底域 養殖 |
生態 | 水深20~150mの大陸棚に棲み、甲殻類、イカ類、貝類、ゴカイなどの底生動物を食べている。 1年で15cm、2年で25cm、4年で40cm、6年で50cmほどになり、最大1mくらいにまで成長する。 なかなか長寿で、長生きのもので40年くらい生きるものもいる。体型も老年になるほど体の高さが低くなっていくので、全体的に細長くなってくる。 水温の低い冬は水深のある深場で越冬し、水温が上がる春先に産卵のため浅場に移動してきて産卵を終え、初夏から晩秋まで水深30m~70m程の岩礁地帯の中層や下層に棲み、冬の訪れと共に水温が下がれば再び深場へと向かう。 4歳以上の成魚は浅深移動せずに、比較的深場を平行移動するようになる。 体側の上半部にコバルト色の小斑点があり体色は赤みを帯び、特に産卵前は濃くなる。 |
漁期 | 4月ころから、11月ころまで。 早春の4月頃に抱卵したのを桜鯛、産卵に湾外から浅場に入り込んで来るのを乗つ込みと言う。 |
鯛漁の歴史
房総での鯛漁の歴史は古く,縄文時代の貝塚からたくさんの鯛の骨が出土していますから,おそらく釣り漁によって捕獲していたものと思います。
江戸時代になると、関西の漁師から網による捕獲方法が伝わりました。それがタイ桂網漁です。
江戸時代前期の17世紀以来、昭和39年まで富津市萩生や金谷周辺の岩礁性の海域で行われていました。この漁法は、カツラと呼ばれる綱でタイを網に追い込む点に特徴があります。桂は長さ100~200m前後の木綿の綱で、40~70㎝間隔でブリキと呼ばれるエゾマツの木片が結びつけられています。このカツラを、二艘のブリ船で海中を曳き、海中で揺れるブリキに驚いたタイをマチ船とアミ船が張る敷き網に追い込み、タイ追い込まれた所で網を引き揚げ捕獲しました。タイを追い込むカツラは、岩に絡まないようにダイセン(代船)二艘が見張り、カツラの後ろからは、その動きを指示する経験豊かな指揮者が乗船する指揮船が続きました。
新鮮なタイを効率的に多数漁獲できたタイ桂網は、江戸時代、世界一の大都市へと発展した江戸へと鮮魚を供給してきた内房漁業を象徴する漁法でした。
タイ桂網漁は、組織的な漁法であったため他の地域では、縄文時代以来の一本釣りや延縄、地曳網、定置網でタイを捕獲していました。
釣り漁も漁場によって、釣り方、仕掛けは様々ですが、特徴的な「ビシマ釣り」を紹介しましょう。
マダイのビシマ釣りは、潮流の早い深場に生息するタイを釣り上げる方法です。
館山の州崎沖では、6ノット以上にもなる潮の流れがあり、いかに垂直に釣り針を落とせるかが勝負となります。そこで、みち糸にビシという噛潰しの鉛のおもりを5cm~10cm間隔で100m以上装着します。その先にカブラという鉛のおもりにテンヤ針を装着し、添え針も付けます。餌は、サルエビやクルマエビを使います。この仕掛けを船上から手釣りでしゃくりながら、タイの食い付いたところを釣り上げるのです。水深100m以上の海の中は、おそらく光の届かない闇の世界です。タイは、餌が見えるとは思えませんが、エビの目が発光するか、においで感知するかしているのでしょう。
鯛料理
「腐っても鯛」というように日本では魚の王様として尊重され、今でも結婚式やお祝い事には、尾頭付きの塩焼きが膳に供されています。
味のバランスがよく、脂肪分の少ない薄紅色の身は淡泊で、刺身や塩焼きをはじめ、いろいろな方法で調理されます。鯛の名の付いた料理も多く、鯛飯、鯛茶漬け、鯛そうめんなどがあり、南房総富浦で発祥したと言われる「鯛シャブ」ももちろんあります。