南房総富浦総合ガイド資料集

富浦の海のちょっとしたお話

【夏の富浦湾】

夏の沖の海面をよく見てみましょう。色が青いというよりも黒っぽく見えるでしょう。
真夏の海は太平洋の黒潮が房総半島に最も近づいて、富浦湾の沖合いにも、その支流が流れ込んできます。海流も非常に速くなり、海底の岩礁にぶつかって渦を巻いている箇所も多く見られます。この潮の中には、ソーダガツオ、ホンガツオ、シイラなどが外洋から入り込んできます。
水面を気をつけて見ると、元気に飛び出すトビウオを見ることもできます。ホソトビウオなどの数種類が確認され、100メートル以上も飛ぶことができて、途中で方向変換をすることもあります。この素早い魚を捕食するシイラはもっと素早い魚です。

【猪ノ瀬付近】

「猪ノ瀬」は、富浦と岩井の境に近いところにあります。外洋から東京湾に入って一番目にある島です。見る角度により猪(いのしし)の形によく似ています。
「島」と言うのは、満潮になっても姿が水面に出ているもの。「瀬」と言うのは、干潮時に水面に出て、満潮時には水面下に没するものを言いますが、猪ノ瀬は、「瀬」と呼ばれているので、温暖期の頃には水面下に没する瀬だったのでしょう。
猪ノ瀬は、航路に近いために、島の沖側に浮き灯台が設置されています。ここでは以前、ベトナム船籍のバンドン号という船が、猪ノ瀬に乗り上げて難破したことがあります。

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小浜海岸から見た猪ノ瀬

【富浦の漁業】

富浦湾では、いろいろな漁業が行われています。
釣りでは、アジ、カマス、タイ、イナダなどで、網では8月1日に解禁となるイセエビ、そして磯魚のカサゴ、メバルなど、砂地ではコチ、ヒラメなどが獲れています。
「大謀網(だいぼうあみ)」と呼ばれる定置網が、大房岬の先端と、南無谷の沖合いに設置されており、大型魚のマグロ、ブリ、タイから小型魚のアジ、イワシまで多種類の海の幸が水揚げされます。
あまり知られていませんが、富浦湾では海士(あま)さんが活躍しており、アワビやサザエの水揚げも多くされています。