歴史伝承街道

南房総の中に、見えてくるもの。

神社仏閣や城郭を、人は何を思って眺めているのだろうか。私は、まず建物が建てられた年代に関心を持ち、建物全体が醸し出す風格を眺め、四方に施された彫刻の精巧さ、太い柱や和様建築の素晴らしさを細部にわたって眺めていることが多いように思う。今ではめったに手に入らない大木の柱に、当時の自然と悠久の時を感じ、大掛かりな工作機などなかった時代のこと、当時の人々の高い技術や熱い思いを感じることができるのだ。その後、この建物を創建したのは誰なのか、縁起について興味を持つ。

 

南房総は、目立って日本の歴史の表舞台に立つことは無かったが、日蓮聖人に代表されるような数々の偉人を生み出し、四国の阿波地方と海を越えて結ばれ育まれた黒潮文化に由来する神社仏閣が建立されてきた。その一方、東京湾の入口に位置することからアジア太平洋戦争時の本土最終防衛線とされていたこの地域には、赤山地下壕跡のような戦争遺跡も今なお残されている。古の時代から今日まで、脈々と続く南房総の歴史を旅してみたい。

日蓮聖人
日蓮宗の開祖・日蓮聖人は、1222年(鎌倉時代)に鴨川市小湊で生まれました。誕生にまつわる不思議な「三奇端」は、今も大切に語り継がれています。その後、山深い清澄寺で修行した後、各地に遊学し、再び清澄寺に戻ったときに立教開宗したと伝えられています。

[安房の三名工の一人]波の伊八

寺社彫刻において、波を彫らせたら日本一といわれた宮彫刻師。関西の彫刻師に「関東に行ったら波を彫るな」とまでいわしめた波の伊八こと武志伊八郎信由は、南房総を拠点に活躍しました。これに、ダイナミックな龍の彫刻で知られた後藤義光、石彫の名人・武田石翁を加えた3人は「安房の三名工」と呼ばれています。

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必見の歴史スポット
日本寺
鋸山南側斜面を境内とし、御影石で作られた2639段の参道が張り巡らされています。聖武天皇の勅詔をうけて開かれた関東で最も古い勅願所といわれています。●安房郡鋸南町元名184 TEL.0470-55-1103
  赤山地下壕跡
東京湾の入り口にある館山は、東京湾要塞地帯の拠点として、館山海軍航空隊や館山海軍砲術学校など、様々な軍事施設が置かれ、赤山地下壕跡も、そうした戦争遺跡のひとつ。その一部は公開され、当時の様子を垣間見ることができます。
●館山市観光協会 TEL.0470-22-2000
安房神社
大和朝廷の成立に大きな役割を果たした四国・阿波の忌部一族は黒潮ルートで南房総に渡来。この地は、安房国を築いた最初の地とされ、祭神は産業の総祖神・天太玉命。安房一の宮として尊拝されています。
●館山市大神宮589 TEL.0470-28-0034
  小松寺
今から1300年も昔、山岳修行の霊地に役小角(えんのおづぬ)が庵を建てられたことにはじまり、1855年に再建されたといわれる古刹は、紅葉の名所としても知られています。
●南房総市千倉町大貫1057 TEL.0470-44-2502
高家神社(たかべじんしゃ)
日本で唯一、料理の神様が祀られています。毎年10月17日と11月23日には「庖丁式」が奉納され、一切手を触れることなく魚を調理する妙技がみられます。
●南房総市千倉町南朝夷164 TEL.0470-44-5625
  石堂寺
1300年余りの歴史を持つ古刹。本尊の木造十一面観世音菩薩立像をはじめ7つの国の重要指定文化財があり、波の伊八の作品も16点所蔵しています。寺の周辺では、森林浴やバードウォッチングが楽しめます。
●南房総市石堂302 TEL.0470-46-2218
清澄寺
千年杉に囲まれた古刹。境内のひときわ高い所にある旭が森は、日蓮聖人がこの山頂で昇る旭日に向かって悟りを開いたと伝えられています。山頂からの朝日は日本の朝日百選に選定されています。
●鴨川市清澄322-1 TEL.04-7094-0525
  誕生寺
1276年、日蓮聖人誕生の地に弟子達が建てたお寺です。その後、津波などによる被害にあって、現在の地に移されました。誕生寺近くの海には、聖人の誕生を祝って鯛が群れた鯛ノ浦があり、今でも海面に群れ泳ぐ鯛を遊覧船から眺めることができます。
●鴨川市小湊183 TEL.04-7095-2621
壮大な歴史ロマンを綴った里見八犬伝。

江戸時代の文化年間、曲亭馬琴が28年間もの歳月をついやして書き上げた伝奇小説「南総里見八犬伝」は、未来永劫にわたって受け継ぎたい名作のひとつ。実は原作を読んだことのない私だが、映画やテレビの題材として幾度となく取り上げられ、その内容を熟知してしまっているというのも名作たる証。南房総観光の際は、ぜひ八犬伝縁の地を訪れてみたい。

伏姫籠穴 ふせひめろうけつ
南房総市富山にある、伏姫と犬の八房が籠もったとされる洞窟。登り口には犬塚の石碑があり、穴の中には八つの玉が置かれています。
  八房公園
南総里見八犬伝「八房」生誕の地です。八房は犬掛の百姓の家に生まれ、富山にすむ狸の乳で育てられました。首と尾に八つの斑点(ぶち)があることから、八房と名づけられました。春日神社下には八房と狸のブロンズ像があります。
●南房総市犬掛
  八犬伝博物館(館山城)
城山公園の頂上、里見氏9代義康・10代忠義の城跡に建てられた天守閣は博物館として、八犬伝に関する錦絵や絵巻物などを展示。館山の街が一望できる人気のビュー・スポットでもあります。
●開館時間/9:00~17:00(入館は 16:45まで) 月曜(祝日の場合翌 日)・年末年始休館
●館山市館山351-2城山公園内 TEL.0470-23-5212