歴史伝承街道
南房総の中に、見えてくるもの。
神社仏閣や城郭を、人は何を思って眺めているのだろうか。私は、まず建物が建てられた年代に関心を持ち、建物全体が醸し出す風格を眺め、四方に施された彫刻の精巧さ、太い柱や和様建築の素晴らしさを細部にわたって眺めていることが多いように思う。今ではめったに手に入らない大木の柱に、当時の自然と悠久の時を感じ、大掛かりな工作機などなかった時代のこと、当時の人々の高い技術や熱い思いを感じることができるのだ。その後、この建物を創建したのは誰なのか、縁起について興味を持つ。
南房総は、目立って日本の歴史の表舞台に立つことは無かったが、日蓮聖人に代表されるような数々の偉人を生み出し、四国の阿波地方と海を越えて結ばれ育まれた黒潮文化に由来する神社仏閣が建立されてきた。その一方、東京湾の入口に位置することからアジア太平洋戦争時の本土最終防衛線とされていたこの地域には、赤山地下壕跡のような戦争遺跡も今なお残されている。古の時代から今日まで、脈々と続く南房総の歴史を旅してみたい。