南房総富浦総合ガイド資料集

野外料理テキスト 野草を食す

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本日の食材・収穫した春の野草

野外料理には流儀や決まり事はありません。自分のペースで楽しく出来ればそれで結構。自然そのものがスパイスです。ただし、毒草や毒キノコにはご注意を、後始末はしっかりと、それだけです。

山菜と野草の違いはなにか。はっきりといえませんが、ここら辺のは野草です。信州や東北地方の山地に行くと山菜に出会えますが、身近な野草でも十分堪能できます。
キノコと違って野草では、毒のある物は少なく、食べても害はありませんが、後はうまいかまずいかです。といっても毒草を食べたら、やはりたいへんです。当然死に至ることもあります。
自分の分かる範囲で食すこと。疑わしきは食さないこと。慣れが危険を呼ぶことになることを覚えていてください。
特に、キノコは、菌で繁殖するため不明な種類が多く発生しますし、これはと思うものでも変種かも知れません。専門家でも判断できないものが半分もあるのです。意外と初心者は中毒を起こさず、ある程度慣れてくると危険であり、上級者でも危険と隣り合わせです。キノコは、専門家といっしょに、過信と慣れが怖いのです。
野外での注意事項のもう一つ、虫とかぶれには注意してください。特に、アレルギー体質の方は、長袖・手袋・虫除け等準備を怠らないでください。
まあ、そう神経質にならずに、身近にある野草を食し、季節を自然を十分に味わい楽しんでください。

食べられる野草

いつも3月に行っている「春の恵を食する」で味わっている野草の一部を紹介します。大房岬で行っているため、海辺のものが多いのですが、野や山にもたくさんの美味しい野草があります。

■アシタバ
房州の海岸線に見られ大房岬ではごく一部でしたが、栽培を始めた人がいたため、岬のところどころで見られるようになりました。ある時、鋸山のロープーウェーの駐車場にたくさんのアシタバを見つけ、こんなところにもと驚いたことがあります。
若芽を切り取りますが、切り口から黄色い汁がにじみ出てくるので、服を汚さないように注意してください。少しのつもりでも結構量があるので、取り過ぎないよう注意しましょう。
スーパーなどにも出ますが、やはり栽培種より野生のものはアクが強く、天ぷら以外は、茹でた後よく水にさらすことが必要です。

■ハマボウフウ
春にウォッチングでのテンプラの時、一番の人気がこれです。サシミのツマとして使われているもので、これは多くは栽培です。野生種はアクが強く、テンプラにしてもそのほろ苦さが残り好まれるようです。
海岸の砂地に埋もれるように生えていますが、浜辺のため今まであったのに、いつの間にか絶えていたということもあります。根は、薬膳としても利用されることがありますが、新芽を摘み取るだけにしてください。
ただし最近は、ペットの犬の糞害が怖く、犬の来なそうなところのものを採取し、よく洗ってから食しましょう。

■ボタンボウフウ
海岸沿いの岩場に生え、やわらかい新芽はいかにもおいしそうですが、ボウフウというとハマボウフウと比べてしまい、あまりおいしいという感じはないようです。同じボウフウといっても、姿形は全く違います。この辺では人気が今ひとつというところですが、薬菜としては知られており、特に沖縄地方など南の地方では好まれているということです。

■ハマカンゾウ
海岸の岩場にあるカンゾウで、夏の終わりに黄橙色のキスゲに似た花を咲かせます。ごく若芽を茹でて和え物が好まれますが、生のまま細かくきざんで、チャーハンの具(ネギ)として使うと極めて美味です。野にあるノカンゾウもまったく同様にして食します。
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■ツワブキ
海岸の岩場や海岸沿いの道ばたなどに見られ、茎と葉の裏側に毛があり、葉の表は光沢があり厚い。この辺では、10〜12月に咲く黄色い花を観賞していますが、関西ではそうはいかないのです。
関西人から見ると、ツワブキはおいしい食べ物なのです。
一度ロイヤルホテルのお客さんをガイドした時、ツワブキを見て一言「おいしそう」これには驚いてしまいました。
たしかに、キャラブキやテンプラにするとおいしいのですが、関東人にはノブキがありますから、食文化の差なのですかね。
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■ツルナ
海岸の砂地によく見られ、葉が三角状卵形で一株が大きく、春から秋まで可憐な黄色い花を付けています。葉が厚く柔らかく、いかにも美味しそうで、若芽をテンプラや油いため、煮びたしなどで食べます。
海岸に普通に見られ採取しやすいため、ウォーキングの時などに、ポケットに入れてくれば、その日の一品は出来上がりでしょう。

■タンポポ
タンポポが食べられるというと皆「えー」といいますが、この花のテンプラは子ども達に人気の一品です。身近で黄色くてきれいな花が食べられるなんて不思議なのでしょう。
やわらかい葉は、レタスと一緒にサラダにすると美味しく食べられます。炒めてみてもよいでしょう。子ども達と一緒に摘んで食べれば、野菜嫌いの解消のきっかけとなるかもしれませんよ。
セイヨウタンポポ、カントウタンポポどちらも味には変わりはないようです。

■フキ
まさに、日本の味・おふくろの味ではないでしょうか。薄めに炊き込んでもよし、キャラブキに濃く煮込んでもよく、その土地その家ごとに味がある一品です。
年とともに好きとなり、日本人なのかと思ったり年かななんて思ったりしていますが、毎年自分のお気に入りの場所で、フキをリュックいっぱい採り、タラの芽やウドも採れれば、なにも言うことはありません。
フキは、野の土手や道路の法面などにも生えていますが、人が栽培していたり、人の土地の物だったりするので、採る時には十分注意してください。

■花びら(ヤブツバキ・スミレ等)
ツバキの花やスミレの花を食べるというと、皆驚かれますが、いざ食べてみると、さっそく家に帰ってやろうということになります。
ツバキの花のテンプラ、チョット大人の味です。そのほろ苦さは、日本酒がほしくなります。
スミレの花は、束ねてテンプラにすると、スミレを食べることだけでチョット気分がハイになります。サラダのトッピングに、生の花をデコレーションしても気分が良くなります。
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スミレ

木の実を食べよう

おいしい木の実、大房岬にもいろいろあります。野草の新芽などとは違って完熟の風味を味わうことが基本です。

■キイチゴ(カジイチゴ)
5月中旬〜下旬に熟し、黄色からオレンジ色になったところが食べ頃です。一気に熟さず分散するので、一回に採取できる量は少ないのですが、日当たりのいい目立つところにあり、また味も極めてよくメジャーなために、熟すのを待ちきれずに採られてしまうのが常です。
こっそり大きな木を見つけた時は、ニコニコ日々通ってしまいます。
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■サクランボ
サクラの花見が終わり一息ついた5月下旬、大房岬にもう一つサクラの楽しみが訪れます。サクランボの季節の到来です。
大房岬のサクランボは、オオシマザクラ、ヤマザクラとソメイヨシノがありますが、味がよいのは、オオシマとヤマザクラで、ソメイヨシノは渋く苦いようです。
その土地の土質や木の状態によるのでしょうが、同じ種類のサクラでも木によって味はかなり違います。美味しい木を知っている子供たちは、他の木には目もくれずに、ある木にまっしぐら。
また、おいしい木を見つけた時は、思わず顔がほころんでしまいます。ただし、果汁のシミにはご注意、チョット落ちなくなりますよ。
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■エビヅル
大房岬を代表する木の実ですか。木の実といっても、その名の示すとおり蔓性です。9月上旬から下旬が食べごろですが、台風の時期であることとゆだんすると鳥に食べられてしまいます。
ちょっとマイナーなものですが、一度たべたら止められません。子ども達も、すっかり病みつきなってしまいました。
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■ヤマモモ
ヤマモモは、房総以南に見られる木ですが、庭木や園地の木として人気があり、多くの場所で植えられました。木は雌雄あり、雌木は高値で取り引きされたようです。山の中では巨木となって見られます。
大房岬でもビジターセンターの南側の園地にありまずが、在来種で実は大きくありません。現在の市役所の中庭に大きく美味しい実の生る木があったのですが、庁舎の増築でなくなってしまいました。

■オニグルミ
雑木林や川沿いの荒地などに良く見られ、大房岬にも数本の木があります。大きな木となり夏に1房10個前後の塊の実を付けます。
クルミというと、お菓子の材料や中華の食材、また山間に旅行に行くと殻付のまま売っており、とても美味なものですが、このオニグルミ、名のようにチョットやっかいな代物です。
熟れた実を採り果肉部分を腐らせ硬い種子を取り出し、その硬い殻から食べる実を取り出すのです。ところが、この殻が固く複雑に入り組んでいるため、きれいに実を取り出すのは至難の業、ぼろぼろになってしまいます。
でも、苦労した実を鶏肉と炒めたりすると極めて美味、至福の時を迎えます。野遊びとは、この苦労が大きいほど美味しいものなのかもしれません。

■アケビ・グミ・ガマズミ
アケビは、今の50代以上の方は、秋にはこれ以上のおやつはなかったのではないのでしょうか。当時は、サルとけんかしても負けないくらい木登りをやったものです。
グミは、ナツグミ・マルバアキグミがありますが、食用にはあまり期待できません。ガマズミは、完熟すると生食でも美味しいのですが、焼酎酒にする方が色といい味も美味となり好まれます。
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グミ