南房総富浦総合ガイド資料集

富浦の海岸線を歩く 大房岬


大房岬の海岸線は、他の富浦の海岸線とは異なり、歩いて廻ることはできません。船で海の方から眺めるのがベストです。

【概要】

岬の海側のほとんどは急斜面で、ヤブツバキ、トベラ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイ、ヒサカキ、モチノキ、ボウシュウマサキなどの照葉樹に混じって、カラスザンショウ、エノキ、オオシマザクラ、イヌビワ、ガクアジサイなどの落葉樹が入ります。
海岸線の岩場や斜面には、イソギク、ツワブキ、ラセイタソウ、ボタンボウフウ、ハチジョウススキ、ハマカンゾウ、スカシユリなどが生えています。

〈ボウシュウマサキ〉
海岸の崖地などに多く、葉が広く、他のマサキほど幹が直立せず、クタクタしています。

【魚付林(うおつきりん)】

北浜側から明神崎までの崖地と出磯鼻(デーソバナ)、鼻の先(ハナット)、西浜に至る崖地では、特に斜面を覆う植物がうっそうと繁り、暗い林床を作っています。このうっそうとした林が海に影を落として魚を集める大切な役割をしています。

【南けい船場付近の植物】

このあたりに唯一の磯や砂浜が開けていて、多くの低木や草本の海岸植物を見ることができます。木本では、テリハノイバラ、ハマゴウ、マルバアキグミなどで、草本では、フジナデシコ(ハマナデシコ)、ハマエンドウ、ハマボッス、ワダン、ハマダイコン、ボタンボウフウ、ツワブキなどです。特に秋のツワブキの花は壮観です。

【大房岬を構成する地層】

岬全体を構成する地層は鏡ケ浦層で、約1千万年前に海底に堆積した火山灰、火山砂、火山礫を主成分とするざらついた岩石で、富浦の他の地域の地層よりも新しく、館山湾を構成する地層と同じです。
地層の様子がよく見えるのは増間島付近と南けい船場の崖です。海の方から見ると増間島では北から南へ、南けい船場付近では南から北へ傾いています。
ここで大房岬がどのように出来上がってきたかを、地質の構成から見ていくことにしましょう。

【大房岬の地層のでき方】

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大房岬は向斜構造の部分と考えることができます。海から見て南けい船場付近の地層は、向斜構造の右側の部分で右上がり、増間島付近の地層は、左側の部分で左上がりに見えるのはそのためです。

【湧き水】

岬全体が向斜構造のため、浸み込んだ雨水は中央部に集まり、やがて湧き水になって小川をつくり、それが滝になって海に流れ落ちます。(瀧淵神社の社名の由来でもあります。)

【大房岬の台地をつくる関東ローム層】

大房岬の台地は黒褐色の関東ローム層で覆われています。このローム層は立川ローム層と同じ頃のものとされ、今から2〜3万年前の火山灰が堆積したものとされています。空気を含み、水はけが良く、植物の生育に適しています。
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南けい船場付近の地層の重なり